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年金政策論

後期 木曜日 4講時. 単位数: 2. 科目区分: 展開講義. 授業形態: 講義. 対象学年: 3,4年次対象. 履修年度: 2024.

実務・実践的授業※○は、実務・実践的授業であることを示す。

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週間授業回数

1回毎週

配当学年

3,4年

実施方法(対面・リアルタイム・オンデマンド・ハイブリッド等)

対面(片平キャンパスエクステンション棟)で実施

連絡方法とクラスコード

Google Classroom による。クラスコード:ertqti3(公共政策大学院と共用)

初回授業日等

10月3日(木)

授業の目的と概要

 年金制度については、非常に国民の関心が高いが、報じられる内容は断片的なものが多いことに加えて、世間の関心がどうすれば得か損かということに向きがちであり、制度全体を理解することは容易ではない。また、年金制度は、社会に出てから稼働生活を終えるまでの半世紀近い長い期間制度に加入し、稼働生活を終えてから生涯を閉じるまでの間給付を受けるという長期間にわたる保障の仕組みであり、その長い期間の間にどのような人生を歩んだかということでどのような保障が行われるか、人それぞれの様々な事情が反映する。また、社会経済の状況の変化に合わせて累次の改正が行われており、経過的な措置も含めて制度が非常に複雑になっている。これらのことが制度の理解を難しくしている。
 年金制度は、約6,700万人が加入し、約4,000万人の受給者がいて、毎年55兆円を超える規模の年金が支給されている巨大な仕組みである。年金制度をめぐっては様々な議論が行われているが、巨大な艦船が急旋回できないように、現実的に政策としてとることのできる選択肢の幅はそれほど広くはない。また、年金の制度設計は国によって異なっているが、先進諸国の間では直面する課題やその解決の方向性には共通点も少なくない。将来が誰にとっても不確実であるが故に、社会経済の変化に対応して、制度も改革を続けなければ、人の一生涯にわたる長い期間の保障はできないが、不確実な将来に対して知見が非常に限られる状況の中で、政策判断と合意形成を行っていかなければならないという困難を宿命的に背負った仕組みである。
 2024年は、5年に1度行われることとなっている公的年金の財政検証が実施される年に当たり、年金制度をめぐる報道を目にする機会も増加するであろうし、出生率の低下や平均寿命の伸長、働き方の多様化、女性や高齢者の就業の増加などの社会経済状況の変化を踏まえた制度改革議論も本格的に展開されていくことと思われる。担当教員は、年金制度における大きな節目となった2004年の制度改革をはじめ、延べ10年近く年金制度の企画立案に関わってきており、この経験を踏まえて、5年に1度迎えるこの特別な年に、年金制度に特化した講義を開講することとした。

 The purpose of this course is to acquire basic knowledge and ways of thinking when discussing pension policy as a public policy. The detailed understanding of pension policy is recommended for careers in public services.

授業内容・方法と進度予定

 講義形式で行う。公的年金を中心に、年金制度を構成する基本的な考え方や機能、制度の発展経過、経済社会の変化に伴う制度上の課題、先進諸国の改革動向を取り上げ、今後の制度改革の方向性を展望する。なお、本年は5年に1度の公的年金の財政検証の年に当たるため、財政検証の準備作業や検討状況によっては、授業の進行中に授業計画の変更があり得る。また、受講人数によっては、講義の中で受講者に発表を行っていただくことも検討する。
 現段階で想定しているスケジュールは以下のとおりである。
 第1回 オリエンテーション、社会保障制度の役割と機能
 第2回 年金制度の機能と設計の考え方
 第3回 年金の財政検証
 第4回~第5回 年金制度の発展経過
 第6回 先進諸国の年金制度と改革の動向
 第7回~第8回 年金制度の制度体系と財政方式をめぐる議論
 第9回~第10回 雇用の変化と年金制度
 第11回 年金とジェンダーをめぐる議論
 第12回 労働力の国際移動と年金制度
 第13回~第14回 企業年金・個人年金制度
 第15回 講義の総括

学習の到達目標

 今後の年金制度について自ら考えていく上で土台となる年金制度を論じる上での基本的な考え方について、制度が直面する課題と対応の方向性とともに理解を深めることを目標に置く。

成績評価方法

 期末に、講義内容に関連して、各自の問題意識や関心に沿って設定したテーマによるレポートの提出を求める。レポート内容(70%)、講義の出席状況や質疑内容(30%)で総合的に評価する。原則として、5回以上の無断欠席がある場合及びレポートの提出がない場合には単位は認定しない。就職活動などでやむを得ず欠席する場合には事前に欠席連絡を行うこと。やむを得ない欠席回数が多い場合には、救済措置としての課題提出を求めるので相談のこと。

教科書および参考書

 教科書は使用せず、教材として毎回講義資料をGoogle Classroomを通じて配布する(紙資料が必要な場合は自分で印刷すること)。
 参考となる文献を以下にあげておく。
宮島洋(1992)『高齢化時代の社会経済学』岩波書店
河村健吾(2001)『娘に語る年金の話』中公新書
盛山和夫(2007)『年金問題の正しい考え方』中公新書
ニコラス・バー(菅沼隆監訳)(2007)『福祉の経済学―21世紀の年金・医療・失業・介護』光生館 (Nicholas Barr(2001)The Welfare State as Piggy Bank: Information, Risk, Uncertainty, and the Role of the State, Oxford University Press)
江口隆裕(2008)『変貌する世界と日本の年金』法律文化社
駒村康平(2014)『日本の年金』岩波新書
濱口桂一郎(2014)『日本の雇用と中高年』ちくま新書
小塩隆士(2014)『持続可能な社会保障へ』NTT出版
西村淳編著(2015)『雇用の変容と公的年金』東洋経済新報社
吉原健二、畑満(2016)『日本公的年金制度史―戦後七〇年・皆年金半世紀』中央法規
香取照幸(2017)『教養としての社会保障』東洋経済新報社
権丈善一(2020)『ちょっと気になる社会保障 V3』勁草書房
香取照幸(2021)『民主主義のための社会保障』東洋経済新報社
OECD(2023)Pensions at a Glance 2023 OECD Publishing

授業時間外学習

 講義の受講に際して、年金制度に関する詳しい知識は求めないが、本講義は年金に関する専門的な内容であるため、講義内容を自分のものとするためには、関連する書籍を参照するなど自主的な学習が必要となる。後述の参考文献に加え、毎回の講義の際に関連する文献、資料をお示しするので、参照して理解を深めていただきたい。(後述する期末レポートの準備にもなる。)また、毎回講義で用いる資料をGoogle Classroom にアップロードするので講義の前に目を通しておくことを推奨する。

その他

○ 本科目は、公共政策大学院との合同とし、片平(エクステンション棟)で開講する。
○ 講義形式で行うが、講義中に当方から質問したり、質問を受け付けたりすることがある。積極的な発言を期待する。
○ 担当教員は、厚生労働省から出向中の実務家教員である。
○ 資料の配付や必要な連絡はGoogle Classroomから行うので、受講者は登録すること。(クラスコード:ertqti3)

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