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言語学・日本語科学

前期 木曜日 2講時 川北キャンパスA305. 単位数/Credit(s): 2. 担当教員(所属)/Instructor (Position): 小川 芳樹 所属:情報科学研究科. 対象学部/Object: 1セメ:法経医薬工(1~5、15~16組)農/3セメ:理系. 開講期/Term: 1・3セメスター. 科目群/Categories: 全学教育科目基盤科目-人文科学. 履修年度: 2024. 科目ナンバリング/Course Numbering: ZFH-LIN101J. 使用言語/Language Used in Course: 日本語.

主要授業科目/Essential Subjects

各学部の履修内規または学生便覧を参照。

授業題目/Class Subject

理論と実践で考える、新しい言語学入門

授業の目的と概要/Object and Summary of Class

我々は、自分の母語については、幼児期に知らぬ間にその文法知識を獲得しており、その中身を特に意識することなく使いこなせるだけでなく、多くの場合、それを知っていることすら意識しない。一方で、その無意識に獲得した母語の知識が、外国語を学ぼうとするときには、妨げになることがある。我々は母語をどのようなメカニズムで獲得しているのだろうか。日本語と英語は、どのような性質が共通していて、どのような点で異なっているのだろうか。また、すべての自然言語に共通の性質とは何だろうか。
また、いかなる自然言語も、その音韻・形態・統語・意味的特徴は、数百年の幅で大きく変化し変異形を生じるばかりでなく、50~100年といった比較的短期間の間にもそれなりに変化する。そのような言語変化は、いったいどのようなメカニズムで起きるのだろうか。また、そのように常に変化している言語でも、それが母語であるならば、我々は苦もなく獲得でき、間違うことなく使うことができるだけでなく、異なる世代間でもコミュニケーションができるのだが、それはなぜだろうか。
本講義では、1950年代以降の現代言語学において明らかにされてきた自然言語の音韻・形態・統語・意味に関する法則性や変化の法則、言語獲得と言語運用を可能にしている脳内文法や認知・知覚のメカニズムについて教科書と教員の解説を通して学ぶとともに、コーパスを使って、特に、日本語や英語の語彙や構文の最新の用法や変化の過程などを調べる方法を身につける。

学修の到達目標/Goal of Study

この授業では、教員による講義と使用される教科書・参考書・配付資料を通して、(A)(日本語・英語のような)自然言語の語と句・文の音韻・形態・統語・意味に関する基本的かつ普遍的な特徴、(B) 日本語と英語がどういう点で共通し、どういう点で異なっているのか、(C) 日本語と英語が、それぞれ、通時的にどのように変化してきたのか、(D) その変化の背後にある共通の法則は何なのか、(E) 通時的に変化せず変異も起こしにくい言語の特徴とは何か、などについて学ぶとともに、(F) そのような諸特徴の一端を自ら調べる手段の1つとしての電子コーパスの使い方を身につけることを目標とする。

授業内容・方法と進度予定/Contents and Progress Schedule of the Class

毎回の授業は,主に教科書に基づく講義と、そこで指摘されている興味深い言語事実の類例や、それに関連する言語事実を自ら調べる時間外学習から構成される。
授業は、おおむね教科書に沿って、以下の内容と順序で進める予定。

Part I: イントロダクション
1:ことばを操る〜「気づいていない」のに「知っている」とは?〜
2:ことばを理論的に科学する〜仮説を立てて検証するとは?〜
3:心と脳の働きを調べる〜実験研究のための方法〜
Part II: 音の文法
4:音の異同の認知〜音素・異音とその処理〜
5:「語」の中の音〜日本語のアクセントと連濁〜
Part III: 語の文法
6:語から別の語を作る〜複雑語の構造と処理〜
7:語の意味と構文〜動詞の意味分解〜
9:WALS、COCA/COHA、BCCWJ/CHJ、CHILDESの使い方
Part IV:文の文法
9:文の階層構造と二階建ての文〜日本語の使役文を中心に〜
10:名詞句の移動〜受身文の構造と処理〜
11:節境界を越えた関係〜疑問文の構造を中心に〜
Part V: ことばの使用と文法
12:話し手と聞き手の関係〜直示移動表現「来る/come」と「行く/go」
13:世界知識と意味〜名詞のクオリア構造〜
Part VI: 言語の普遍性・多様性:通時的変化
14:言語類型論と言語普遍性
15:言語の通時的変化

成績評価方法/Evaluation Method

学期中盤に提出する課題を50%、学期末に提出するレポートを50%として、総合評価する。

教科書および参考書/Textbook and References

  • ことばを科学する〜理論と実践で考える、新しい言語学入門〜, 伊藤たかね, 朝倉書店 (2023) 資料種別:教科書
  • 言語はどのように変化するのか, 小川芳樹・柴﨑礼士郎(監訳), 開拓社 (2019) 資料種別:参考書
  • 文法化・構文化・語彙化, 小川芳樹・石崎保明・青木博史(共著), 開拓社 (2020) 資料種別:参考書
  • パソコンがあればできる!ことばの実験研究の方法–容認性調査、読文・産出実験からコーパスまで, 中谷健太郎(編), ひつじ書房 (2019) 資料種別:参考書
  • はじめての言語獲得 ―普遍文法に基づくアプローチー, 杉崎鉱司(著), 岩波書店 (2015) 資料種別:参考書

関連URL/URL

http://ling.human.is.tohoku.ac.jp/change/home.html(言語変化・変異研究ユニット)
https://www.english-corpora.org/corpora.asp (BYU Corporaリスト)
http://www2.aasa.ac.jp/people/smiyata/CHILDESmanual/chapter01.html (CHILDES)
https://www.researchgate.net/profile/Yoshiki_Ogawa (ResearchGate)

授業時間外学修/Preparation and Review

指定された教科書や参考書を各自購入し、授業に先立って読み進めるとともに、演習問題にも取り組むこと。
授業の中盤で教示される電子コーパスの使い方を踏まえて、自ら、日本語や英語の語彙や構文についての事実を調べ、分析すること。

実務・実践的授業/Practicalbusiness※○は、実務・実践的授業であることを示す。/Note:"○"Indicatesthe practicalbusiness

授業へのパソコン持ち込み【必要/不要】/Students must bring their own computers to class[Yes / No]

パソコンの持ち込みを必要とする。また、授業はリアルタイムで(Google Meetを使って)行う。

その他/In Addition

言語学に関する予備知識がない人や、理系の人でも、言語学を基礎から学ぶことができます。

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